2025年10月21日、富山地方裁判所は、実父から長年にわたって性被害を受けていた女性・福山里帆さんに対する裁判で、被告の父親に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
裁判所は、「福山さんの供述には高度の信用性が認められる」と明言し、父親の弁解については「全く信用できない」「被害者の人格を愚弄するような発言」と断罪。
被害者が実名で告発し、法廷で闘い抜いたこの9年間の記録は、多くの人々に勇気と希望を与えています。
判決後に開かれた記者会見で、福山さんは震える声で、しかしまっすぐに前を見つめながら、「頑張ったことを社会が認めてくれた」と語りました。
当記事では、彼女の会見内容やこれまでの軌跡、支えてくれた人々、そして設立した新たな支援団体「Second Birthday」に込められた思いを丁寧に辿ります。
事件の概要と判決の内容
福山里帆さんは、幼少期から実父による性被害を受けていました。
長年にわたる苦しみの末、2023年(令和5年)3月に警察へ告訴状を提出。
2年半にわたる裁判の末、ついに2025年10月21日、判決が下されました。
富山地方裁判所は、福山さんの供述を「高度に信用性がある」と高く評価。
一方で父親の供述は「全く信用できない」「被害者の人格を踏みにじる卑劣かつ悪質なもの」とし、求刑通りの懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
この「求刑通り」という結果は珍しく、裁判所が被害者の訴えを真摯に受け止めたことを示しています。
福山さんは会見で、「検察側の求刑より短くなることが多いと聞いていたので、求刑通りの判決をいただけたことに、心から安心しました。やってよかったと思いました」と語り、胸の内を明かしました。

福山さんの会見で語られた「闘い」の記録
判決当日、里帆さんは「無罪だったらどうしよう」と不安で眠れなかったと話しました。
法廷に入った瞬間、体が震え、胃が痛くなるほどの緊張。
それでも、「真実を伝える」という信念で証言を続けました。
特に印象的だったのは、3月の証言。
裁判所がその供述を「高度に信用に足る」と認めたことについて、彼女はこう語っています。
「3月の証言がすごく大変だったので、ここで報われたなと思いました。頑張ったことを社会が、裁判官が認めてくれたんだと感じました。」
引用:チューリップテレビ
一方で、父親は7月の被告人尋問で「娘が性被害を望んでいたかのような発言」をしたといいます。
その言葉を聞いた里帆さんは、「非常に憤りました。私を何だと思っているんだと」と、怒りと悲しみを吐露しました。
裁判長が量刑理由で「卑劣かつ悪質」と指摘したことに対しては、「私の気持ちが裁判官に伝わっていると感じ、安心しました」と述べ、長い闘いに終止符を打ちました。
夫や支援者の存在が与えた力
実父を訴えるということは、家族との決別を意味します。
孤立し、心が折れそうになる中で、支えてくれたのは夫・佳樹さんの存在でした。
「検察に行った後や証言の前後は体調が悪く、家事もできませんでした。でも夫は責めずに支えてくれました。」
引用:チューリップテレビ
夫は、彼女が親と決別する覚悟をする前に結婚を決意し、「新しい家族」として彼女を支えました。
また、裁判では産婦人科医や児童相談所職員、元交際相手など、彼女を知る人々が証言を引き受け、被害の実態を裏付けました。
「心ない言葉をかける人もいたけれど、寄り添ってくれた人たちのおかげで今、生きていられる。」
引用:チューリップテレビ
「味方がいる」という実感が、彼女の闘う力になりました。
Second Birthday設立と今後の目標
判決後、福山さんは一般財団法人「Second Birthday」を設立しました。
目的は、家庭内性被害に苦しむ子供たちが刑事告訴に踏み切る際、裁判期間中の生活支援を行うこと。
「SNSを見ると、告訴に踏み切りたいけど何をすればいいかわからない人が多い。そういう人たちの力になりたい。」
引用:チューリップテレビ
「Second Birthday(セカンドバースデー)」という名前には、“生まれ変わる”という意味が込められています。
判決を経て新しい人生を歩み出した彼女の姿勢は、同じ苦しみを抱える人々に希望を与えます。
さらに、「加害者を許さないという社会の姿勢が、犯罪の抑止にもつながる」と語り、被害者が声を上げやすい環境づくりの必要性を訴えました。
今苦しんでいる人へ届けたいメッセージ
福山さんは、現在も家庭内性被害に苦しむ人たちへ、強いメッセージを送りました。
「今、すごくつらいと思います。でも社会は見てくれています。勇気を出して、信頼できる大人に『助けて』と相談してほしい。」
引用:チューリップテレビ
「司法の場で公平に裁いてくれるから、怖くても行動してほしい。」
引用:チューリップテレビ
彼女が体現したのは、“声を上げることで社会が動く”という現実です。
被害者が声を上げるには恐怖と勇気が必要ですが、その一歩を支える社会が必要だと、彼女は訴えています。
ネット上での反応と声
ネット上では、この判決と会見に対し多くの反響が寄せられました。
・「被害者の声が正当に評価された。実名で告発する勇気に感動した」
・「家庭内性虐待の実態がようやく社会で可視化された」
・「Second Birthdayの活動を応援したい」
一方で、
・「被害者が声を上げるまでに何年もかかる社会の仕組みを変えるべき」
という意見もあり、再発防止策や教育の必要性を訴える声も目立ちました。
ネット上の共感と課題の両方が示されたことで、今後、社会全体で「被害者を孤立させない」支援の仕組みづくりが求められています。

まとめ
福山里帆さんが9年間の苦しみを乗り越え、法廷で真実を語り切ったことは、日本社会にとって大きな意味を持つ一歩です。
彼女は「頑張ったことを社会が認めてくれた」と語りました。
その言葉は、全ての被害者に向けた「あなたの声は届く」という希望のメッセージでもあります。
そして、彼女が設立した「Second Birthday」は、“被害の終わり”ではなく“新しい人生の始まり”を象徴しています。
家庭内性被害をはじめとする性暴力を無くすためには、社会全体が当事者意識を持ち、被害者の声に耳を傾け、支える姿勢を持つことが欠かせません。
この物語は、ただの裁判報道ではなく、「誰かを救う勇気の記録」です。
そして、今苦しんでいる誰かにとっての「生まれ変わりのきっかけ」になるはずです。
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