2025年10月21日、富山市民プラザにて開催された「富山青年会議所(JC)」の10月度公開例会では、サッカーJ2・カターレ富山の左伴繁雄社長と、バスケットボールB1・富山グラウジーズの高堂孝一社長が登壇。
スポーツの“勝敗”にとどまらない、地域密着型クラブとしての価値や、地元富山への熱い想いが語られました。
両クラブが置かれている厳しい現実の中でも、「地元と共に歩むスポーツクラブの意義」と「これからの地域活性化の鍵」を探る対談から見えた、未来戦略とは何か。
地域愛に根ざした2人のメッセージをもとに掘り下げていきます。
「強さ」よりも「存在価値」を大切にするカターレ富山
カターレ富山は現在、J3降格の危機に直面しています。
しかし、左伴社長はこの状況を逆手に取り、クラブの本質的な価値を改めて問い直しました。
「今(J3に)落っこちちゃいそうだから、こんなこと言っちゃいけないんだけど」
「サッカーが強いだけがサッカーの魅力ではない」
「残ろうが、落ちようが、カターレがあってよかったと思ってもらえるようにする」
引用:北國新聞
このように、単なる“勝利”に依存しないクラブ運営を明確に打ち出しています。
実際に、試合のない日でも復興支援や地域貢献活動を続けており、サッカークラブとしての枠を超えた社会的役割を担っているのです。
「存在していること自体が地域の希望になる」。
その思いがあるからこそ、苦しい状況下でもサポーターや地域社会からの支援を集め、再び上昇のきっかけを掴むことができるのでしょう。
左伴社長の言葉からは、地域密着型クラブに求められる「感情的価値」が感じられます。
クラブがあることで地域が誇りを持てる。
そんな存在を目指す姿勢は、スポーツの本質的な力を示しています。

応援したくなるチーム作りと富山グラウジーズの挑戦
B1リーグで戦う富山グラウジーズもまた、厳しい現実と向き合っています。
入場者数の基準を満たせなかったことで、Bプレミアライセンスに制裁付きでの交付という課題に直面しているのです。
そんな中でも、高堂社長は次のように語りました。
富山で頑張っているどのチームに対しても応援したくなる環境をつくることが大事」
「より多くの人に試合に足を運んでほしい」
引用:北國新聞
これは単に自チームの成績や運営状況にとどまらず、「富山全体のスポーツ文化の底上げ」が必要だという広い視野を持ったメッセージです。
“応援したくなる環境”とは、単に試合内容の良し悪しではなく、チームの姿勢、イベントの楽しさ、地域とのつながりなど多面的な魅力が組み合わさって成立するもの。
グラウジーズはその仕組みづくりに本気で取り組んでいます。
観客動員という“数値”を達成するためにも、まずは“感情”を動かすこと。
その起点となるのが、「このクラブを応援したい」「一緒に盛り上げたい」という地域住民の自発的な熱量です。

郷土愛とスポーツが生む地域活性化の力
両社長が共通して強調していたのが「郷土愛」の重要性です。
クラブは選手やスタッフの集合体であると同時に、地域にとっての象徴でもあります。
勝つことだけが評価の対象ではなく、地域に貢献し、地域に誇りをもたらす存在であることが、スポーツクラブの本当の価値です。
スポーツを通じて下記のような効果が生まれています。
・地域イベントやチャリティ活動を通じた交流の場の創出
・子供たちへの夢や目標の提供
・地域経済への波及効果(飲食店・観光・交通機関など)
・高齢者や多世代のつながり促進
まさに「スポーツがまちを育てる」時代。
これは富山に限らず、日本各地のスポーツクラブに共通するビジョンでもありますが、富山ではその第一歩を着実に踏み出していると言えるでしょう。
引用:北國新聞
まとめ
カターレ富山の左伴社長は、クラブの存在意義を「勝利」以上に「存在価値」に見出しました。
一方、富山グラウジーズの高堂社長は、地域全体がスポーツを応援したくなる「環境づくり」の重要性を説きました。
どちらの言葉にも共通しているのは、「クラブの本当の魅力は、地域との結びつきによって生まれる」という信念です。
これからの時代、スポーツクラブは単なるエンタメではなく、まちづくりの担い手であり、地域社会の希望の象徴です。
勝っても負けても「応援したい」と思えるクラブがある。
それこそが、地域に根ざしたスポーツ文化の豊かさと言えるのではないでしょうか。

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