富山地方鉄道(以下「地鉄」)が、鉄道線の本線の一部区間について、沿線自治体からの運営支援がなければ来年度にも廃止を届け出る可能性を示しました。
現在、県および沿線市町が「来年度の運行支援」について、今月29日に分科会で意向を示す見通しです。
沿線自治体や利用者にとっては、ひとまず“廃止延期”が実現できるかどうかの重大な分岐点を迎えています。
当記事では、滑川〜宇奈月温泉間を中心に、廃止対象区間の現状・背景・可能性・自治体支援の意味を整理します。
富山地鉄・本線の廃止対象区間とは?
地鉄が廃止方針を示している区間を整理すると、本線では「滑川〜宇奈月温泉間」がメインの対象です。
具体的には、滑川駅から宇奈月温泉駅まで、31.5kmにわたる区間が「支援がなければ廃止を届け出る」という報道があります。
また、併せて、立山線の岩峅寺〜立山間も廃止意向が示されており、こちらも自治体の支援次第という状況です。
このように、沿線自治体・利用者にとっては「生活の足を守る」か「鉄道の見直し・廃止」かという大きな岐路に立たされています。
引用:KNB
なぜ地鉄は廃止方針を出したのか?
地鉄が今回このような廃止方針を公表した背景には、複数の要因があります。
まず第1に、経営的な課題です。
地鉄は、採算が取りづらい区間が存在するという点を認めており、特に本線の滑川〜宇奈月温泉間に関して「採算がとれない」とのこと。
また、自治体・県からの支援が明確に得られなければ、鉄道を維持することが困難という判断に至ったようです。
“沿線自治体から支援など方針が示されなければ、来年11月末で廃線とするべく、年内に届け出る方針”と報じられています。
さらに、地鉄自身が指摘しているのは、「単年度ごとの自治体補助」だけでは持続可能な運行維持には限界があるという点です。
地鉄は、国の補助を得られる再構築計画を視野に入れた“中長期的な支援”を求めています。
今回の廃止方針は、沿線自治体側に“真剣な支援検討”を促す意味合いも含まれていると見られます。
つまり、鉄道会社・自治体・県という3者の関係性の中で、経営環境の厳しさと公共交通としての使命、地域鉄道の存続という観点が交錯しているのです。

滑川〜宇奈月温泉間は廃止回避の可能性
本線の滑川〜宇奈月温泉間について、廃止を回避できる可能性や、自治体支援の流れ、今後の展望を整理します。
まず、大きな動きとして、今月29日に、県および沿線自治体(具体的には、魚津市、上市町、滑川市、黒部市)と地鉄の社長が出席する分科会が魚津市で開催され、来年度の運行支援に関して自治体側が意向を示す見通しです。
この会合で、自治体側が「滑川〜宇奈月温泉間の廃止を先送りするよう」求める方向で動いているという報道があります。
地鉄は「自治体側から支援策が示されれば、予算など内容を見極め、「来年度」について運行継続させるかどうか判断する」という姿勢を明らかにしています。
これらを総合すると、廃止回避の可能性は決してゼロではなく、自治体・県・鉄道会社の協調次第で“先送り”という形で運行継続の道が残されている状況です。
ただし、注意すべき点もあります。
自治体側の支援が“単年度”の補助にとどまれば、地鉄が求める“中長期再構築支援”には届かず、根本的な持続性には不十分という声があります。
住民・沿線自治体にとっては、単に“1年延びる”だけなのか、それとも“持続可能な運行体制”が構築されるのか、が大きな焦点となるでしょう。
沿線住民の「通勤・通学・観光アクセスを失いたくない」という切実な声や、地域経済・観光に及ぼす影響も重くのしかかっており、今後の自治体側の支援方針の内容・規模・長期性が極めて重要です。
地鉄の求める中長期的支援とは?
地鉄が求めている支援の方向性、自治体・県が押さえるべきポイントを整理します。
まず、地鉄側は「単年度ごとの自治体支援」ではなく、国の補助が得られる再構築計画を視野に入れており、これを前提とした中長期の運行再生策を求めています。
つまり、ただ「来年度だけ予算を出します」という形ではなく、数年にわたる持続可能な運行維持のための枠組み・ロードマップを求めているわけです。
自治体側にとってのポイントも明確です。
単に“資金支援”というだけでなく、下記のような観点も含まれます。
・利用促進(乗客数を増やす、観光需要を喚起するなど)
・公共交通としての役割(住民の通勤・通学・医療・買物アクセスを守る)
・運行継続のための数値目標・収支改善プラン
・運行維持以外の代替交通手段との関係整理(バス転換など)
・地域交通政策(県・市町が中長期的に交通インフラをどう位置づけるか)
地鉄・自治体・県の三者が、「同じ方向を向いて」支援・再構築を進めていくことが、廃止回避・運行継続のカギになるでしょう。
立山線の今後の動きにも注目(岩峅寺〜立山間)
本線区間とあわせて、もう1つ注目するべきは立山線の岩峅寺〜立山間です。
地鉄はこの区間についても「沿線自治体からの支援がなければ来年11月末にも廃止届け出を検討する」との方針を示しています。
この区間は、山岳観光ルートとしての役割も強く、地域観光・アクセスという観点でも影響が大きいと報じられています。
したがって、滑川〜宇奈月温泉間だけでなく、立山線の動きも含めて地域交通全体の見直しという大きな文脈で捉える必要があります。
自治体・県・地鉄が将来の“交通インフラとしての鉄道”をどう位置づけるかが問われています。
ネット上での反応と声
ネット上見られる反応を整理します。
・「鉄道が廃止されたら通勤・通学・日常生活に大きな影響が出る」
・「観光ルートが途絶えてしまうのではないか」
・「地方私鉄が赤字で廃止を検討するのは全国的な課題」
・「地鉄の対応はモデルケースになり得る」
・「議論を十分時間をかけて進めてほしい」
・「公共サービスとしての鉄道をどう支えるかを明確にしてほしい」
こうした反応からも、住民・利用者の声をどう反映させるか、そして自治体・鉄道会社が説明責任を果たせるかが今後の信頼構築にとって重要であると言えます。

まとめ
今回、富山地方鉄道の本線・滑川〜宇奈月温泉間について、自治体・県・地鉄の協議が進んでおり、廃止回避・運行継続の可能性が少しずつ見えてきています。
一方で、運行を継続させるには、単年度支援だけではなく「中長期的な再構築支援」「国・県・自治体を巻き込んだ交通政策との連携」が不可欠です。
沿線住民・利用者にとって、この協議の行方は“地域の足”を守る鍵となります。
今後、自治体側の支援方針や地鉄の判断に注目です。


コメント