2025年11月22日、富山地方鉄道(通称:富山地鉄)の立山線が、全線存続の方向で大きく前進しました。
これまで赤字区間として廃線が検討されてきた岩峅寺~立山間について、富山県・富山市・立山町の三者が「2027年度から再構築事業に着手する」と合意したことで、路線の存続が現実味を帯びています。
当記事では、なぜ廃線の方針から一転して存続となったのか、その背景や今後の展望などについて深掘りします。
廃線回避が決定
立山線の岩峅寺~立山間は、かねてより乗客減少による赤字が深刻で、廃線の候補となっていました。
しかし、今回の合意により、2027年度から国の支援を活用した「再構築事業」に着手することで、廃線の危機を脱する方向性が示されました。
背景には、次の3つの理由があります。
1. 山岳観光路線としての価値
立山線は、世界的にも知られる観光ルート「立山黒部アルペンルート」へと通じる重要な鉄道路線です。
富山地方鉄道によると、同路線による経済波及効果は年間約30億円にも及び、地域観光経済に不可欠な存在であると評価されています。
2. 地域住民の生活路線
観光路線としてだけでなく、立山町や富山市の住民にとっては、通勤・通学・通院などの“生活の足”でもあります。
舟橋貴之・立山町長は「観光もそうだが、住民の生活の足を守るためにあらゆる手段を講じたい」と強調。
単に収益性だけでなく、地域交通の役割が見直された結果です。
3. 再構築事業の着手
再構築事業とは、国の制度に基づき、地方鉄道の運営を「みなし上下分離方式」に移行することを含みます。
鉄道施設の維持管理は自治体が担い、運行部分を民間鉄道会社が担うことで、経営負担を軽減しつつ路線を維持する新しい枠組みです。
この制度を活用することで、廃線回避が可能になると判断されました。
※画像はイメージです。

今後の収益改善策と新たな料金制度
路線の存続を実現するには、単に運営費を補填するだけでなく、持続可能なビジネスモデルの確立が求められます。
今回、下記のような具体的な施策も検討されています。
座席指定料金・特急料金の導入
立山線では今後、観光客向けに座席指定料金や特急料金を導入し、収益を確保する案が出されています。
高需要期や特別列車での導入が予想され、観光と収益性の両立が狙いです。
協議運賃制度
沿線住民の運賃を据え置いたまま、実際の運賃との差額を自治体が負担する「協議運賃制度」も検討されています。
これにより、住民の負担増を避けつつ、鉄道会社の収益改善を図ることが可能になります。
みなし上下分離方式への移行
再構築事業の前提として「みなし上下分離方式」の導入があります。
これは、鉄道インフラ(線路や駅など)の維持管理を自治体が担い、運行業務は鉄道会社が行う形態です。
すでに複数の地域鉄道で採用されており、今後の公共交通の新モデルとして注目されています。
地元自治体と富山地鉄の今後の動き
今回の合意に至るまでには、自治体と鉄道会社の連携が不可欠でした。
今後も下記のスケジュールと対応が進められます。
・立山町は2025年12月定例議会に「先行調査費」を予算計上予定
・富山市も立山線以外の本線への運営費支援を表明
・富山地鉄は「再構築事業を明確に目指すのは一歩前進」と前向き姿勢
・11月29日に本線分科会、12月1日に不二越・上滝線の分科会を開催
・12月中に沿線7市町村が参加する全体会を予定し、最終判断へ
これらの流れを経て、最終的には富山地方鉄道が路線の正式な存続判断を下す予定です。
ネット上での反応と声
ネット上では、今回の合意について様々な意見が飛び交っています。
好意的な声
・「立山黒部アルペンルートの観光価値を守れて良かった」
・「生活路線がなくならなくて安心」
・「協議運賃制度は新しいけど、住民に優しい仕組みだと思う」
懸念・慎重な声
・「制度は分かったけど、本当に収益が上がるのか不安」
・「今は“再構築に着手”というだけで、まだ実行されてない」
・「自治体の財政負担が続くことへの懸念もある」
政策への期待
・「富山のようなモデルが他地域でも広がれば、地方鉄道の未来が変わるかも」
・「利用者の声を拾って制度を改善しながら進めてほしい」
全体として、「存続は歓迎、今後の中身に注目」といった空気感がネット上では広がっています。

まとめ
富山地鉄立山線の全線存続に向けた合意は、地域交通・観光・制度改革の交点で生まれた大きな前進です。
特に「再構築事業」や「協議運賃制度」など、全国でも注目されるモデルケースになりつつあります。
今後は、具体的な制度設計と利用者への丁寧な説明、そして観光と地域交通のバランスをどう取るかが鍵となるでしょう。


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