高校生が起業する時代が、もう目の前に来ています。
富山県では、県立高校でも「起業」を学ぶ授業が導入され、10代の若者たちが地域課題解決に挑んでいます。
そんな中、富山県高岡市に住む高校3年生・油谷駿杜さんは、1年生のときに会社を設立し、AI開発やまちづくりイベント「変革祭」を通じて地域に貢献しています。
プログラミングという得意分野を武器に、高校生起業家として挑む10代の力とは?
当記事では、なぜ今、高校生が起業するのか、油谷さんの挑戦、高校生が仕掛ける地域活性イベント、10代だからできる地方創生の形などについて深堀りします。
なぜ今、高校生が起業するのか?
近年、「高校生起業家」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
その背景には、いくつかの社会変化と教育の変革があります。
まず、地域の少子高齢化・人口減少という地方課題が顕在化し、「若い世代による地域活性」が強く求められています。
そんな中、従来の「進学・就職」という進路モデルだけでは捉えきれない、新しいキャリアの選択肢として「高校生起業」が注目を集めています。
また、教育現場でも変化が起きています。
例えば、富山県内のある高校では、生徒が地域課題を解決するアイデアを「会社として形にする」授業が始まっています。
こうした授業の中で「起業は『大変なこと』『自分でやったらつらい』と思っていたが、この授業で『ちょっと楽しそう』と感じるようになった」と語る生徒もいます。
このように「起業=難しい」というイメージを変え、「起業=楽しそう/挑戦できる」という高校生のマインドシフトが進んでいます。
さらに、デジタル技術・プログラミング・AIといったスキルが、高校生でも手が届く時代になったことも大きな要因です。
得意な分野を活かして社会を変えるというモデルが、以前よりも現実的になっています。
こうして、「若い世代」「地域志向」「デジタルスキル」という3つの潮流が交差し、今、「高校生起業」が現場レベルで動き始めているのです。

高校1年で会社を立ち上げた油谷駿杜さんの挑戦
高岡市に暮らす油谷駿杜さんは、高校1年生で会社を設立し、現在は高校3年生として起業家・エンジニアとして活動しています。
中学生の頃から動画編集を手掛け、個人事業主として活動していた経験を起点に、「自分の得意を社会の役に立てたい」と考え、プログラミングを活用した本格的な起業に踏み切りました。
彼の会社では、工場向けの AI「不良品認識システム」を開発・販売しており、これは「プログラミングの画面」からも読み取れる、高度な技術ベースの事業です。
なお、富山県内の高校ではアルバイト禁止という学校も多く、起業を歓迎する雰囲気ではないと彼は感じ、「この学校」を選んだと語っています。
進学先として選んだのは、通信制高校の N高グループ。
N高には「起業部」があり、事業計画書の作成・指導、最大1,000万円の活動費など本格的な支援制度が整っています。
実際に「起業している子もいっぱい。挑戦しているのが自分ひとりじゃないっていう安心感が入学していちばんよかったなと思う要素」と油谷さんは話します。
このように、彼は「環境」「スキル」「意識」の3軸を整えつつ、高校という学業の傍らで起業という“もう1つの道”を選び、実践に移しています。
高校生起業家としてのリアルな苦悩も語られており、高校生だからこその信用獲得の難しさ・時間の制約・学業との両立など、挑戦の陰には努力があります。
高校生が仕掛ける地域活性イベント「変革祭」の全貌
彼のもう1つのチャレンジが、地域街づくりイベント「変革祭」です。
高校生が自身で企画・開催し、富山県高岡市に県内外から高校生を無料招待し、2泊3日の合宿形式で高岡の課題・解決策を探り、市長に提案を行いました。
参加する高校生たちが、地域への愛着・当事者意識を育む場として機能しています。
イベントの企画・運営には、学生団体「takaoka」が立ち上げられ、同世代のメンバーとミーティングを重ねています。
さらに次のステップとして、地方に関心を持つ学生のネットワーク展開および新会社設立も予定されています。
「この『変革祭』っていうネットワークを使って地方を一体で盛り上げていくような仕組みに昇華させていければすごくうれしいな」と彼は語っています。
この取り組みは、「高校生=消費者」「高校生=学ぶ人」というこれまでの枠を超えて、「高校生=行動する主体」「高校生=地域を変えるプレイヤー」という新しい立ち位置を提示しています。
地域活性化に高校生の視点が加わることで、アイデアの自由度・スピード感・若者同士の連携といった強みが発揮されやすくなります。
10代だからできる地方創生の形とは?
10代という年齢には、デジタルネイティブとしての柔軟性、既成概念にとらわれない発想、そして行動の軽さという強みがあります。
高校生起業家が地方創生に携わる意義として下記のような点が挙げられます。
・発想の自由度:社会経験が少ない分、「こうあるべき」という先入観に縛られず、新しい視点から地域課題にアプローチできます。
・行動力とスピード:学校や部活といった枠がある中でも、若いならではのチャレンジ精神で短期決戦を仕掛けやすい環境があります。
・共感・仲間づくりの力:同年代を巻き込むことができ、学生ネットワークとして動きやすい。地域・高校・学生が一つのエコシステムとして機能する可能性があります。
・地域との接点が近い:地元に住む高校生だからこそ、「このまちを自分ごととして捉える」意識が高く、地域の当事者として動ける強みがあります。
ただし、10代だからこそのハードルもあります。
社会経験の浅さから信用を得る難しさ、学業・クラブ活動との両立、資金や支援体制の限界などです。
だからこそ、地域・学校・社会のサポートが不可欠です。
富山県では、こうした教育環境・支援体制を整える必要があるという指摘もあります。
高校生が起業を契機に「地域に目を向ける」「当事者意識を持つ」「自分の得意を社会に還元する」、
この3つが10代だからこそ創出できる地方創生の形だと言えそうです。
まとめ
「高校生起業家が地域を変える時代へ」。富山県発、AI開発から街づくりまで挑む10代の力は、多くの可能性を秘めています。
高校生だからこそ持てる視点・行動力・当事者意識を活かし、地域・社会に貢献するモデルがここにあります。
しかし、この動きを本当に広げ、持続可能なものにするには、教育・支援・社会環境の整備が不可欠です。
今後、富山県にとどまらず、全国で「高校生起業家」が当たり前に活動する社会が来るかもしれません。
 
	 
	 
	 
	 
	 
	 
	 
	 
	
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